日本ふしぎ祭

9月22日 泣き相撲(栃木・樅山)


かつて古代ギリシアでは、国と国とが戦争するかわりに、格闘家をひとり代理に立て、死ぬまで戦わせて勝敗を決したという。

これは、無駄な流血を防ぐための、優れた知恵だったのだ。

「泣き相撲」の起源は知らないが、これをはためから見れば、いい大人が自分たちは決して戦わずに、無理やり赤ちゃんを代理に立て、にらめっこさせて勝敗を決めているとしか思えない。

なかなかすがすがしい相撲なのだ。

この場合、泣いたほうが勝ちなのである。

会場は、親御さんたちの異様な熱気に包まれていた。自分の子供をなんとかカメラに収めようと、必死のバトルを繰り広げているのである。

これほどカメラマンの多い祭りもめずらしく、このエネルギーの100万分の1でもアフガンに分け与えれば、かの地に平和が訪れるのではないかと、僕はひとり夢想していた。